教授あいさつ

整形外科の診療と研究に研鑽し、
岩手医科大学整形外科学教室の新たな歴史を

整形外科学の魅力

整形外科は、骨、関節、靭帯、脊髄、神経、筋肉などを中心とした全身の運動器の疾患や外傷を扱う診療科です。また、小児から高齢者までの幅広い年齢層の患者さんを対象とし、診療においても保存的治療から外科的治療までを行っている極めて守備範囲の広い診療科であることが特徴であります。高齢化社会の到来により今後も患者数の増加が見込まれ、さらに患者さんの生活の質の向上に対する高い要求や老若男女を問わずスポーツの普及を考えると、医療全体における整形外科の需要と重要性は増す一方であります。

岩手医科大学 整形外科学教室
主任教授 土井田 稔

日本の整形外科はいずれの専門分野においても世界のトップクラスに位置しています。特に、基礎研究から臨床研究までを手掛けているのは日本の整形外科の特徴といえます。軟骨や骨の再生医療、骨粗鬆症や関節リウマチにおける研究成果に基づく新しい薬物療法などはすでに臨床応用されています。臨床面では、新しい人工関節の開発、関節鏡や脊椎内視鏡を用いた最少侵襲手術、ナビゲーション支援手術、ロボット手術など運動器疾患に対する新しい治療方法は常に進化しています。岩手医科大学整形外科においてもこれらの新しい手術に積極的に取り組んでいます。

このように整形外科は、基本的な技術を伝承していくだけでなく、若い医師の柔軟な発想による創意工夫が必要とされる非常にやりがいと発展性のある診療科です。

岩手医科大学整形外科の魅力

岩手医科大学は本邦において最も伝統のある私学のひとつであり、整形外科学講座は初代三木威勇治教授による昭和10年の開講以来90年の伝統をもつ教室であります。前任の先生方により培われた歴史と伝統を平成25年9月1日から嶋村正前教授より引き継がせて頂きました。教室の同門会である折肱会の会員は、岩手県、東北地方を中心に全国に跨り、その会員数は250名に達します。盛岡市内および県内各地の地域基幹病院を中心に20以上の研修病院を持ち、豊富な症例数と経験豊かな専門医のもとできわめて質の高い卒後研修を受けることができます。また、豊富な症例数を元に外科医としての技術もいち早く実践の場で身につけことが可能であります。幅広く研修できるように整形外科専門医の資格を取得するまでは、各病院を定期的にローテーションし、教育と研修の分担をはかっています。

大学の教室には、脊椎、膝関節、股関節、手・マイクロサージャリ―、骨軟部腫瘍、関節リウマチの各分野の専門医がスタッフとして、臨床および研究に活躍しております。整形外科専門医を取得した後は、各分野で専門医としての道を歩んでいきますが、この間、希望があれば国内留学や国際留学の門戸も大きく開いております。

これからの進路を考えている若い研修医や学生の皆さんが、岩手医科大学整形外科での研修を選択されることを切望しています。そして、若い先生方と共に整形外科の診療と研究に研鑽し、岩手医科大学整形外科教室の新たな歴史を作っていきたいと考えています。

岩手医科大学整形外科学教室の沿革

昭和10年(1935)4月11日、岩手医学専門学校整形外科学講座は開講いたしました。“誠の人間・良医の育成”の信念のもと本学を創立された、本学の祖・三田俊次郎先生(初代校長・理事長)の地域医療への強い情熱から生まれたご英断により、東京帝国大学より三木威勇治教授をお迎えして、東北地方では最初の整形外科学講座の開設となりました。初代三木威勇治教授(昭和10〜12年)から、第二代名倉順三教授(昭和12〜13年)第三代久原健三教授(昭和13〜17年)、第四代竹林貞吉教授(昭和17〜22年)、第五代羽根田貞郎教授(昭和22〜25年)、代理 栃内巌助教授(昭和25〜29年)、第六代三木威勇治教授(昭和29〜31年)、第七代猪狩 忠教授(昭和31〜60年)、第八代阿部正隆教授(昭和60〜平成10年)、第九代嶋村正教授(平成10〜25年)、第十代土井田稔教授(平成25年〜)へとその伝統と歴史は受け継がれてきました。この歴史の中、荒井三千雄秋田大学整形外科学教授、星 秀逸岩手県高次救急センター教授、奈良 卓岩手医科大学形成外科学教授、猪又義男附属花巻温泉病院整形外科教授、遠藤重厚岩手医科大学救急医学教授、田島克巳岩手医科大学医学教育学講座教授などの幾多の人才・人傑が教室から輩出いたしております。

教室の同門会・折肱会(医経・・折肱自識其病理:王 陽明より)の会員は、岩手県、東北地方を中心に北海道から沖縄まで22都道府県に跨り、その会員数は250名になっております。教室の歴史は、この同門会との強い連携のもとで、脈々と刻まれてまいりました。第51回日本整形外科学会、第18、40回日本手の外科学会、第15回日本形成外科学会、第13回日本救急医学会総会、第42回東日本臨床整形外科学会、第14回日本超音波研究会、第32回小児股関節研究会、第59回東日本整形災害外科学会、第48回日本側彎症学会、第70回東日本整形災害外科学会、第30回日本腰痛学会などの開催の一方、550回を超える岩手整形災害外科懇談会を基軸とした十数種の定例の地方会・研究会や恒例の市民講座の開催を通じて、本学健学の精神の一翼を担うべく、地域社会の整形外科医学・医療への貢献に邁進しております。

「嶋村 正、岩手医科大学整形外科学教室開講70周年記念業績集巻頭言を一部改変」