学会・研究会 過去の参加報告
第19回いわて運動器スポーツ傷害研究会/第538回岩手整形災害外科懇談会
2022年11月19日にマリオス18階会議室180・181にて第19回いわて運動器スポーツ傷害研究会/第538回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。コロナウイルス感染症:第8波に突入した状況下にもかかわらず40名以上の多数の先生方のご参加がありました。
講演Ⅰでは、岩手県立中央病院整形外科の藤澤博一先生に「当科での手術の現状と膝関節スポーツ損傷の治療」として近年における県立中央病院の手術を中心とした治療の現状と課題点などご講演いただきました。キネマティックTKAなど理想的手術の実現の話やACLの再建手術の術式選択についての見解などご自身の症例を挙げてわかりやすくご説明いただきました。
講演Ⅱでは、奈良県立医科大学の田中康仁教授に「足関節捻挫の診断・治療の問題点と将来展望」として手術動画などを中心にご講演いただきました。トピックスとして足関節捻挫は内返し捻挫ではなく回外捻挫となることが2022年4月から決定したことや足関節捻挫に対して保存治療と手術治療の比較、現在までの治療法の歴史(現在はエコー下など低侵襲手術も施行されるようです。)など大変興味深いお話を拝聴できました。
ご講演いただきました藤澤先生、田中先生、座長の土井田教授、ご出席いただきました先生方、また共催いただきました久光製薬様におかれましても大変感謝申し上げます。今後も運動器スポーツ傷害の治療における発展にご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
第32回雫石夏季セミナー
令和4年8月20日〜21日に第32回雫石夏季セミナーが開催されました。コロナの影響により昨年同様、雫石セミナーとはいうものの盛岡の岩手教育会館において行われました。
初日は岩手医科大学膠原病・アレルギー内科教授の仲哲治先生、富山大学医学部整形外科教授の川口善治先生、東京医科大学整形外科教授の西田淳先生、那須中央病院院長の吉川一郎先生の4名の先生に御講演をしていただきました。仲先生には「JAK阻害剤の安全性と評価マーカーについて」と題してJAK/STATシグナル伝達と免疫制御、JAK阻害剤の特徴、長期安全性、評価方法について詳しくお話しいただきました。川口先生には「脊柱靱帯骨化症-明らかにしてきた知見と今後のアプローチ-」と題し脊椎靱帯骨化症の原因と病因、手術アプローチなどについて解説していただきました。凱旋講演となる西田先生からは「骨盤帯腫瘍切除後の再建」として骨盤周囲の各部位における、切除、人工関節、生物学的再建それぞれの手術例をご提示して頂きました。適切な切除縁と荷重に耐えることが大事ということを念頭にした骨腫瘍ならではという手術の数々に驚かされました。吉川先生から「知っておきたい小児整形外科診療のあれこれ」と題し、発育性股関節形成不全、足部変形、側弯症などについて分かりやすく説明して頂きました。二日目は、土井田教授から医師の働き方についてのお話しの後、主に若い先生へのレクチャーとして、小野寺智彦先生から人工骨頭置換を中心とした股関節手術のアプローチと使用機種の選択について、田島吾郎先生から半月板の解剖と機能、半月板損傷の病態と治療について、大竹伸平先生から関節リウマチの診断と治療について、佐藤光太朗先生から手指骨折の手術治療について、それぞれお話しを頂きました。若手ではなくても大変勉強になりました。私はハンズオンセミナーを担当させて頂き、関節鏡と模擬膝を用い、all-insideデバイスとinside-out法による半月板縫合の実技が行われました。初めて実際のall-insideデバイスを使った若い先生も多く、良い機会になったと思います。大変有意義なセミナーとなりましたが、入局したての先生だけでなく整形外科志望の初期研修医にも多数来て頂いたため、懇親会を行えないことが残念で来年に期待したいところです。
コロナウイルスが未だ落ち着かない中、遠方よりお越し頂き御講演頂いた演者の先生方、参加して頂いた先生方、またハンズオンセミナーで惜しみなくご協力頂いたStryker社の方々にそれぞれ感謝を申し上げます。
第536回岩手整形災害外科懇談会に参加して
去る令和4年7月30日に盛岡グランドホテルにて、第536回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。
本会においては、まず私の方から米国Emory大学への留学に関してご報告させていただきました。Emory大学での貴重な経験や、海外生活での体験談をご紹介させていただきました。研究内容に関しても、一部ではありますがデータを提示させていただきました。今後当講座において海外留学を目指す若い医師への起爆剤になってくれたらと考えております。また、この場を借りて留学をご許可いただいた土井田教授、村上教授に改めて御礼申し上げます。同門の先生におかれましても、ご支援いただき大変ありがとうございました。
特別講演ですが、大阪大学整形外科教授岡田誠司先生と九州大学整形外科教授であり、現在日本整形外科学会理事長をお務めの中島康晴先生にご講演いただきました。
岡田先生からは、整形外科研究の新時代と題して、現在各界で話題となっているAI技術について多くの知見をお話しいただきました。
内容といたしましては、医療におけるAI技術の必要性、ゲノム医療、画像診断支援、医薬品開発などに関してAIとの連携をお話しいただき、実臨床に関しては、骨折診断や半月板損傷自動判別、神経鞘腫と髄膜腫鑑別、カスタムガイド手術ガイドおよびプレートの開発など、まさに整形外科診療の新時代の幕開けを感じることができました。また、AIを用いた痛みの客観的評価として、痛みを「みえる」化する取り組みであるパッチ電極を使用したウェアラブル脳波計の開発+AI解析など、間違いなく今後我々整形外科の診療に導入される技術なども提示いただきました。
続いて、中島先生からは、股関節外科の進歩と課題と題しまして、先天性股関節脱臼人工股関節置換術、寛骨臼形成不全への骨切り術、大腿骨頭壊死症の病態と関節温存、CAOSの進歩、股関節鏡視下手術の進歩、新しい疾患概念の確立、FAI、軟骨下脆弱性骨折などに関してご講演いただきました。
股関節外科の成り立ちを振り返りながら、股関節形成術やTHAの歴史、セメントレスカップの変遷などを系統立って講演いただき、世界、そして我が国の股関節外科の発展を肌で感じることができました。また、新技術に関してもTHA術前後の定量的評価を行うためにインプラント内にセンサーを入れる方法などを提示いただき、大変興味深い内容でした。
中島先生が行われた膨大な手術からの20年の関節生存率なども提示いただき、術前病期の影響などを考慮すべしなど、若い整形外科医で股関節外科を目指す医師へのメッセージとしては大変メッセージ性の強い内容であったと思っております。
最後になりますが、今回は急遽Web講演とのハイブリッド開催となりましたが、大きなトラブルもなく会が終了となり、共催メーカーである第一三共株式会社の方にもこの場を借りて御礼申し上げます。
以上を持ちまして、第536回岩手整形災害外科懇談会のご報告とさせていただきます。今後とも、ご指導、ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
JOSKAS-JOSSM 2022
2022年6月16~18日にかけて、札幌コンベンションセンター・札幌市産業振興センターでJOSKAS-JOSSMが開催されました。
昨今はコロナ事情も落ち着きを見せ始め、私自身は初の現地発表を行うことができました。学会の空気感を楽しむとともに、発表前の緊張感を経験しました。
本学会は例年と違い、勉強の場である他に、Freddie H.Fu先生を偲ぶ会としても開催されました。といっても、お恥ずかしいことに私自身は学会に参加するまでFu先生を存じ上げず、発表の合間に映るFu先生を開催大学の北海道大学の先生と勘違いしておりました。メモリアルシンポジウムに参加し、初めてFu先生がどれほど膝に対して重要な先生であるかを知りました。シンポジウムには本学より田島吾郎先生も演者の一人としてご参加し、「We Lost the Great Landmark, Where Should We Go?」のご講演をしていただきました。一般的な膝の解剖の話だけではなく、Fu先生が新生児・動物・原人までと幅広く膝に対して解剖の研究をしていたと聞き、会場では度肝をぬかされましたが、それほどの興味がなければ現在の膝に対する治療形態は築かれなかったと考えると、Fu先生が我々に残して頂いた偉業に感謝をするばかりでした。また、自分自身もより一層の興味を持って日常診療に挑む必要があると実感しました。
コロナ禍でも現地開催を可能としていただいた北海道大学の先生方、共催の多くの会社の方々には誠に感謝を申しあげます。
第18回岩手骨折治療研究会・第535回岩手整形災害外科懇談会
令和4年6月4日 ホテルロイヤル盛岡において 第535回岩手整形災害外科懇談会と共催されました。 コロナ下の開催のため、テーブル配置に工夫し人数制限を行いながらほぼ定員一杯の33名の多くの先生方に参加していただきました。
一般演題と研修医教育講演の座長を、盛岡市立病院 菊地修平先生に勤めていただきました。
一般演題は一席目に県立胆沢病院の野々口マリア先生から『小児外傷性骨端線損傷・閉鎖に対し骨部分切除と脂肪移植を行った一例』が発表されました。
二席目に県立大船渡病院 田島育郎先生から『Delbet-CoLonna分類Ⅲ型の小児大腿骨頸部骨折に対するLCP Pediatric hip plateの使用経験』が発表されました。いずれの症例も、珍しい症例でしたが、現状の成績は素晴らしいものでした。
次に研修医教育講演は、予定ではインプラント周囲骨折の治療を予定していましたが、諸般の事情で講演が間に合わず、救急・災害・総合医学講座 救急医学分野 特任講師 菅重典先生に講演交代していただき、 『外傷における頸椎固定法 -当センターでの症例と工夫-』 の演題名で岩手県高次救急センターでは年間 手術が必要な頸部外傷が30数例あり、安全で強固な固定力が得られ若手医師に教えやすい後方固定方法を行っている。と報告していただきました。
招待講演は、千葉こどもとおとなの整形外科 院長 西須 孝先生をお招きし、 『小児の骨折治療で大切なこと -私の経験から-』というお話をしていただきました。
小児の骨折は後遺症を見据えたICが必要だ。過成長 remodeling off asymmetrical growthがおこる。治療したときにそのような可能性に言及しなければ、後出しじゃんけんのようになり、信頼関係が築けないとお話しされました。
骨折部位によってremodelingが起こりやすい部位がある。ソルターハリス分類を考慮しながら治療するが、成長軟骨を傷つけperforation bar から 骨性架橋を起こしてしまうⅠ型もある。ソルターハリス分類を信じすぎないようにと示されました。
骨性架橋の手術に対して、骨髄鏡を用いて骨切除術の症例提示がありました。10歳以下が成績よく、患者は術後痛み少なく、再手術も嫌がられない手術ですと研修によこしてくださいと温かい言葉をいただきました。そのほかモンテジア骨折を見逃さない、内上顆骨折(内顆骨折軟骨部分が大きく見逃す)、小児外傷性股関節脱臼は自然整復されることがあり関節内に骨片をはさみこんでしまうことがある、大腿骨骨端線損傷の荷重開始時期の決定はMRIで骨端核の血流再開を確認してから、新生児の上腕近位の骨端線損傷 360度転位の可能性を念頭におくレントゲンで見えない軟骨骨折等々 多くの症例をご提示され、豊富な経験をお話しいただきました。
西須先生大変ありがとうございました。
講演後西須先生に質問したい先生が多く、早く弁当でなく立食パーティが開かれるようになればいいと思いました。
最後に講演くださった先生方に感謝し また、御参加を賜りました皆様に深謝いたします。
第70回東日本整形災害外科学会学術集会を開催して
「予測不能なコロナ禍での学会開催の難しさ」
2021年9月17日、18日、土井田稔会長主催のハイブリッド形式で行われた第70回東日本整形災害外科学会学術集会は、大きなトラブルもなく無事成功裏に終了致しました。まずは本学会開催、運営にあたり、物心両面にわたりご協力いただいた折肱会の先生方には心より厚く御礼申し上げます。
学会準備はコロナ禍前から始まりました。本学会は例年、比較的多くの演題が集まるにもかかわらず実際の会場には聴衆は少なく、総合学会であるがゆえ今ひとつ盛り上がりに欠ける学会でした。そこで学会長の土井田先生は今まで以上に本学会を盛り上げるため「若手整形外科医の育成」ということにフォーカスした企画を中心に、シンポジウムや主題はできるだけシンプルかつ実診療上のトピックをテーマとし、多くの演者や聴衆に興味を持って参加していただくようにしました。また文化講演、特別講演、教育研修講演などは、その道のスペシャリストの先生方にご講演いただき、参加した若手整形外科医へ、より良い臨床研究を行う教育的な側面を充分にサポートできるような構成にしました。さらに若手優秀演題アウォード、若手ケースアウォード、ケースシリーズアウォードなど若手医師が参加できる様々なawardを設け、恒例のスポーツ大会もフットサル、3×3バスケットボール、駅伝など全ての種目を行い、全員懇親会では大学医局対抗のわんこそば大会なども企画しました。個人だけでなく各大学の医局としての団体参加も促すことで、演題登録数だけでなく学会そのものを盛り上げるよう様々の工夫を凝らし、あくまで現地開催で行うことを前提に鋭意準備を進めていました。
しかし2020年から世界中を震撼させていた新型コロナウイルス感染症の影響で、国内外で開催される学会の現地開催は殆どが中止、またはWeb上での代替開催を余儀なくされていました。2020年の日本整形外科学会、東日本整形災害外科学会は完全Webオンライン学会となり、2021年の日本整形外科学会はWebオンライン学会+現地開催の形式で行われましたが、現地開催はあくまで無観客でのオンデマンド配信の収録が目的として行われました。しかしこのコロナ禍で、中小規模の学会は徐々にZOOM等のミーティングアプリを用いて、リアルタイムでのライブ配信やディスカッションが可能な形式での開催が行われるようになり、これに現地開催を組み合わせた、いわゆるハイブリッド形式での開催も行われるようになりました。本学会の準備も当初考えていた現地開催だけでなく、Web形式やハイブリッド形式での開催も視野に入れる必要が出てきました。
現在でもコロナウイルスは波状攻撃のように、新たな変異株が現れる度に急激な流行と沈静化を繰り返していますが、幸い2021年当初は岩手県では大きな流行の波はしのいでおり、さらに本邦でも待望のワクチン接種が開始されました。演題募集が始まった3月頃は全国的に第3波が収束していたことから、当初の予定通り現地開催を基本とする方針となりました。我々事務局でも演題応募がどの位あるか全く予想できませんでしたが、最終的に505題(文化講演1、特別講演2、教育研修講演9、ランチョン11、イブニング3、主題13、シンポジウム127、若手優秀演題アウォードセッション32、若手ケースアウォードセッション28、ケースシリーズアウォードセッション16、一般演題258、学術奨励賞受賞者講演5)と本学会過去最多の演題登録数で、いわて県民情報交流センターの8会場(当初予定)をフルに活用しての開催予定としました。これは土井田教授が示された様々な新しい企画や、参加される学会員がいかに現地開催を熱望していたかによるものとだと思います。この時点では当初の予定通り、現地開催を原則として通常の学会準備とスポーツ大会などの会場予約などを並行して進めていました。
ところが7月からアルファ株から置き換わったデルタ株が猛威を振るい、全国で急速かつ大規模な感染拡大が生じ始め、ニュースでは連日陽性者数増加が報道され、東京、大阪などの大都市圏を中心にまん延防止等重点措置や緊急事態宣言が発出されました。岩手県でも、8月下旬にまん延防止の適用を政府に要請、結果対象からは外れましたが、ついに県独自の緊急事態宣言を発出するに至りました。そのため当初の計画は変更せざる得なくなり、最終的に開催形式が決定したのは、学会開催まで1ヶ月半を切った8月下旬になりました。開催形式はハイブリッド形式とし、座長演者共現地もしくはWebで登壇していただくことになりました。また現地の聴衆は会場へ入場可能としましたが、Webでの配信はライブではなくオンデマンド(期間内に希望に応じ動画配信を視聴可能な形式)形式とし、演題数が多かった一般口演は残念ながら全て事前収録によるオンデマンド形式のみとしました。それに伴い会場は8会場から6会場に縮小されました。また会長招宴、全体懇親会は中止とし、スポーツ大会は最後まで開催の可能性を探りましたが、当初参加を希望していた大学医局へのアンケートで、殆どの大学で参加が不可能になったことからスポーツ大会も中止することにしました。
学会開催の数日前からいよいよ会場の準備が始まり、誰も経験したことがないハイブリッド形式での比較的規模の大きな学会開催に向け、東京から多くのWeb専属スタッフと驚くような大量のIT機材が搬入されてきました。医局からもPCに詳しいスタッフ数名をWeb担当に固定して、残りの医局スタッフも総動員で受付から会場の進行係まで配置しましたが、会場が多いため医局スタッフだけでは全てがカバーできず、2日間の会期中関連病院から延べ14名の手伝いをいただきました。
実際に学会が始まると我々が予想していたより多くの参加者が現地に来場されました。最終的には現地、WEB登録含む参加登録約が770名(うち、現地参加者233 名)、オンデマンド全体の視聴数が1,822回(配信期間中視聴数1,255回、講演受講数567回)と一般的に参加登録やWebでの視聴者が少ないハイブリッド形式としては、比較的多くの会員に参加していただけたと思っています。しかし運営の方はハイブリッド形式ということで事前の予想がつかないことも多く、期間中も現地とWeb での頻回で臨機応変な接続や切り替で全く息が抜けない進行でしたが、業者スタッフと運営側スタッフの協力で、全てのセッションを大きなトラブルなく打ち合わせ通りに順調に終了することができました。Web関係は全て業者の方々の力をお借りし、一般口演がオンデマンドになり2会場が閉鎖され、スポーツ大会も中止になったにも関わらず、我々医局スタッフのマンパワー的にはギリギリの状態で、会場や時間によっては進行からアナウンスまで一人何役もこなしてもらう場面もありました。もしも本学会がタイミング良くコロナが沈静化している時期の開催で、スポーツ大会なども予定通りに全て開催されていたら、正直かなり大変だったと思います。
最後になりますが、このような全く予測不能なコロナ禍での本学会が成功裏に開催できたのも、特に学会事務局の莫大な量の作業を正確かつ確実に処理していただいた担当秘書の野中さん、コロナの状況で開催方法が二転三転するなか臨機応変に誠実に対応していただいた新和企画の新井田さんのご尽力によるものと心から感謝しております。また講演やセミナーのスポンサードや様々な面でお手伝いいただいた各企業の皆様、準備から携わっていた学会事務局の皆様、受付や単位取得など事務的処理などをスピーディーにテキパキとこなしていただいた医局秘書の佐藤さん、平山さんにも併せてお礼申し上げます。本当に全く予測不能な新型コロナウイルスに振り回された第70 回東日本整形災害外科学会学術集会でしたが、今回のような現地に行かなくても学会に参加できる新しい形式での学会開催は、コロナ後においても学会の新しいスタンダードになっていくと思います。医局や関連病院の若手スタッフにはこのような状況での学会開催という貴重な経験を活かし、将来是非さらに大きな学会を再び盛岡で開催できるよう、臨床や研究に励み、それを大いに発信するよう期待しています。
第534回岩手整形災害外科懇談会
令和4年4月16日、ホテルメトロポリタン NEW WINGにて第534回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。
未だ収束しないCOVID-19の影響で愛知医大、高橋先生はWeb講演を余儀なくされましたが、松原メイフラワー病院、松原先生は兵庫県より来盛いただきました。
特別講演Ⅰは愛知医科大学整形外科教授、高橋伸典先生より「血友病性関節症診療の現状と課題」のご講演をいただきました。疾患自体が珍しく、関節症から発症した際には整形外科医には診断にも苦慮する疾患であり、また手術の際は出血コントロールなど周術期管理が重要となりますが、ご自身の症例を提示してevidenceを踏まえて、治療法など分かりやすくお示しいただきました。
特別講演Ⅱは松原メイフラワー病院院長、松原司先生より「RA治療の温故知新」のご講演をいただきました。人間の歴史から始まりR Aの歴史、治療変遷について講演が進み、薬物治療を中心に現在のRA治療についてご自身で研究されている遺伝子解析と薬効との関連をお示しいただきました。
石割桜が開花し、春の訪れを感じるなかでの開催でしたが、未だコロナウイルス感染の動向を伺いながらの開催状況が続いております。ご講演下さいました先生方、また感染拡大防止に留意頂きながらご参加下さいました皆様、そして共催の中外製薬株式会社様に感謝申し上げます。
第43回岩手脊椎脊髄外科懇話会・第533回岩手整形災害外科懇談会
2022年3月26日(土)にメトロポリタン盛岡で、厳重なコロナ感染対策の下おこなわれました。
特別講演1は新潟大学整形外科准教授の渡辺慶先生に「高齢者の腰背部痛と脊柱変形への疼痛管理も含めたマネージメント:パーキンソン病も含めて」というテーマで講演していただきました。今後増加していくであろう高齢者の脊柱変形と痛みに関する問題点、そして難治性疾患であるパーキンソン病の脊柱変形における現時点での知見について豊富なデータを元に非常にわかりやすく講演していただきました。特に骨粗鬆症薬の進歩によって、術後のインストゥルメント関連合併症を減らせる可能性があること、そして手術だけではなくフレイル(骨格筋)の評価に基づいたリハビリテーションの必要性など、どれも明日からの日常診療に役立つ内容でした。
特別講演2は東北大学整形外科教授の相澤俊峰先生に就任された「ヒヤリから学ぶ脊椎外科」というテーマで講演していただきました。ご自身が経験された臨床例(内容は公にはできません)に基づき、思い込みの危険性、頻度が低くとも起こりうる合併症を認識しておくことの重要性についてわかりやすく講演していただきました。実際に慣れ親しんだ術式であるからこそ陥りやすいピットフォールでもあり、まさに日常診療に直結した内容でした。そして研究面において、最近話題のハゲタカジャーナルの失敗談についてもお話しされました。どういった経緯で罠にはまるか、その後の経過についてなど非常に興味深い内容でした。今後論文投稿を考えている先生には参考になったことと思います。
地震の影響により渡辺先生は直前まで大阪周りの空路も検討されましたが結局チケットの問題で現地入りできず、相澤先生はタクシーで仙台から岩手に来ていただきました。
本当に講師の先生には感謝申し上げます。また共催していただいた大正製薬の方々にも感謝を申し上げますとともに、今後も岩手の脊椎外科の発展のため引き続き支援のほどよろしくお願い致します。
第8回いわて関節フォーラム・第532回岩手整形災害外科懇談会
2022年2月19日に盛岡グランドホテルで第8回いわて関節フォーラム・第532回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。
特別講演では愛知医科大学医学部整形外科学講座主任教授の出家 正隆先生に『 変性半月温存への試み 』の御講演をいただきました。
講演では半月板の基礎、半月板損傷に対する手術方法、特に変性半月で多い水平断裂に対する縫合方法とその工夫、幹細胞移植や切除半月板を用いた半月板再生の研究についてお話いただきました。スポーツなど外傷に伴って発生した若年者の半月板損傷と異なり、変性半月では縫合しようとしても糸をかけることができないことも多く、また切除すれば変形性関節症を進行させてしまうことにもなり、変性半月の治療は非常に悩ましいことが多いと思われます。出家先生が手術時に行われている半月板縫合時の工夫として骨髄液で作成したFibrin Clotを用いる方法やTrephinationの併用などとても役立つお話を伺うこともできましたので、今後の手術で生かしていきたいと思っております。
遠方よりお越しいただき御講演いただいた出家 正隆先生、御参加いただいた先生方、共催の科研製薬株式会社の方々に感謝申し上げます。
第531回岩手整形災害外科懇談会
2022年1月8日(土)に盛岡グランドホテルで開催された第531回岩手整形災害外科懇談会に参加致しました。
今回は、江南厚生病院副院長で脊椎脊髄センター長の金村徳相先生と、鳥取大学医学部保健学科教授で同附属病院リハビリテーション部長の萩野浩先生にご講演いただきました。
金村先生には、「この10年大きく変わった脊椎外科治療〜次の10年に向けての最新脊椎外科手術」という演題で、脊椎の術中ナビゲーションや、次世代のロボティックアームについてなど、最新脊椎手術に関して幅広くご講演いただきました。江南厚生病院は日本国内で最も早く最新脊椎手術技術を取り入れている病院の1つで、ロボティックアームを用いた手術など、最先端の手術の現状や課題点などをご教授いただきました。多くの患者に説明するときなどは、低侵襲手術とは言わず、「侵襲の低減化」を図っていると伝えていると仰っておりましたが、非常に感銘を受けました。江南厚生病院も、当院も比較的高度な変形矯正を要する手術を多く施行していますが、変形の程度によっては高侵襲の手術にならざるを得ません。それを低侵襲ではなく、同程度の結果を少しでも侵襲を少なくすることや合併症リスクを低減するためにナビゲーションの併用や、側方進入手術や経皮的椎弓根スクリューを利用することの有効性を改めて認識しました。また、従来の全て後方から行う方法と比較すると側方進入手術や経皮的椎弓根スクリューを利用することは患者さんのみならず、術者側の負担は少なくなりますが、そのために本来の適応から外れた術式選択時をしてしまわないように心がけることの重要性もご教示いただきました。
萩野先生には、「脆弱性骨折の予防と治療〜課題と対策〜」という演題でご発表いただきました。骨粗鬆症による骨折、それに伴う社会的損失について改めて理解できました。また、現在の骨粗鬆症の薬物治療のスタンダードな考え方について詳しく解説いただき、さらにコメディカルと協力し、横断的治療を行うリエゾン治療の重要性についてご教授いただきました。国際骨粗鬆症財団(IOF:国際的な骨粗鬆症の治療、予防・啓蒙活動に取り組む財団)が、ベストプラクティスフレームワークとして認められた病院には、現在は賞を与えられているようですが、岩手県ではまだ認められた病院はありません。今後是非岩手でも、広く骨粗鬆症リエゾン治療の文化が根付き、受賞できればと考えさせられました。
今回お二人の先生にご講演いただいた事を常に考え、今後の日常診療にあたりたいと思います。
第530回岩手整形災害外科懇談会
2021年11月20日ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングにおいて第530回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。
特別講演Ⅰは岩手医科大学整形外科助教の大竹伸平先生による「当科における関節リウマチ治療の現状」でした。ガイドラインに基づいた関節リウマチの診療について、自験例を交えて解説して頂きました。症例に応じた治療選択、しっかりと目標を掲げ漫然と治療しないことなど勉強になりました。減少が懸念されているリウマチ整形外科医の存在意義についても述べられました。大竹先生と供にリウマチ診療を頑張る若手の整形外科医が増えればいいなと思います。
特別講演Ⅱは横浜市立大学整形外科教授の稲葉裕先生に「変形性股関節症:病態,診断,治療の新しい展開」をご講演頂きました。有限要素解析を用いた力学ストレスの影響やPETを用いた応力と骨代謝の関係などの研究業績をはじめ、変形性股関節症の病態について、後半は手術について動画も交えてお示し頂きました。ゴルフやテニス、ヨット、ヨガに至るまで様々な分野のスポーツ復帰を可能とするMIS-THAの技術の高さに感銘を受けました。最後にはコンピューター技術を用いた寛骨臼回転骨切りなど最先端の手術についてもご教授頂きました。
ご講演頂いた先生方、共催の小野薬品工業の方々に感謝申し上げます。
第18回岩手臨床リウマチ研究会・第529回岩手整形災害外科懇談会
令和3年9月4日16時から第18回岩手臨床リウマチ研究会が開催されました。昨年はCovid19の影響で中止となり2年ぶりの開催です。本会に先立ち世話人会が行われ、令和3年4月から岩手医科大学病院に新規開設された膠原病アレルギー内科分野から仲哲治先生、藤本稔先生、村田興則先生(復帰)の3名と整形外科講座から大竹伸平先生の合計4名が新世話人に選出されました。本会は整形外科系と内科系のリウマチ専門医を中心に講演会を開催し、岩手県および近隣地域のリウマチ医療の向上を目的としています。新進気鋭の先生方に新世話人になっていただけたことは大きな励みとなりました。今回より駒ケ嶺正隆先生から吉田昌明に代表世話人が引き継がれました。また初代代表世話人の小山田喜敬先生には新設ポストの最高顧問として今後のご指導をお願いしました。
今回の当番世話人は二宮内科クリニックの二宮由香里先生でした。代表世話人の挨拶のあと特別講演1の座長は吉田昌明講師は独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター整形外科医長の金子敦史先生で「現在のJAK阻害剤5剤の選択のトレンドを考える」特別講演2の座長は二宮クリニック副院長の二宮由香里先生講師は東邦大学医学部内科学講座膠原病分野教授の亀田秀人先生で「RAの最新診療とTNF阻害剤の活用」の表題でご講演をいただきました。関節リウマチの治療はメトトレキサートと生物製剤の導入で大幅に改善しました。さらにJAK阻害剤の登場は、リウマチ治療のさらなる飛躍が期待できます。リウマチ診療に携わる医師が、より有効かつ安全に使えるようにこれらの薬剤を育てていくべきであることをメッセージとして受け取りました。今回の研究会はWeb参加は行わず、従来の対面だけの開催としました。勿論、参加人数や時間制限を設け、集会のルールに則って行われました。久々の開放感もあり参加者から多くの質問とご意見が交わされました。二宮由香里先生からの閉会の挨拶では、内科の先生方が第2回研究会から趣旨に賛同し合流したこと、岩手と近隣の整形外科と内科との研鑽の場になっている貴重な会であるとのお話をいただきました。閉会後の親睦会は4人2時間のルールで行われたことを追記いたします。第19回は整形外科の宗像秀樹先生が当番世話人です。
第31回雫石夏季セミナー
2021年8月21・22日に第31回雫石夏季セミナーが2年ぶりに(新型コロナウイルスのため昨年は中止)開催されました。新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う岩手県独自の緊急事態宣言下での開催となったため、感染対策のため宿泊や懇親会は取りやめ、十分広い会場に参加人数を制限して行われました。会場も例年の雫石開催ではなく、岩手教育会館になりました。
1日目は本学内科学講座脳神経内科・老年科分野主任教授の前田哲也先生、神戸労災病院整形外科部長の金谷貴子先生、東京女子医科大学整形外科学教室主任教授の岡崎賢先生にご講演いただきました。前田先生には「パーキンソン病の診断と治療」と題して、パーキンソン病についての基礎から最新の知見、整形外科にも関わる診断のポイントなどについてお話しいただきました。金谷先生には「手根管症候群の診断と治療」と題して、普段の臨床に役立つ手根管症候群の診断のコツ、特に神経伝導検査結果による診断や予後、治療の違い等をわかりやすく説明していただきました。岡崎先生には「変形性膝関節症に対する手術療法の選択」と題して、変形性膝関節症に対する治療を保存療法から関節鏡視下手術、骨切り術、人工関節置換術といった手術療法の多岐に及びお話しいただきました。治療方針については年齢や病期で単純に決めるのではなく、患者さんの背景を踏まえて十分にICした上で決定されていることが印象的でした。様々な分野の第一線でご活躍されている先生方から日々の臨床に直結する貴重なお話しを伺い大変有意義な1日となりました。
2日目は主に非専門医の先生方を対象としたセミナーが行われました。まず土井田稔教授から当教室の歴史とプレゼンテーション(スライド作成)について、多田広志先生から転移性骨腫瘍について、菅原敦先生から足疾患について、私が肩疾患について、千葉佑介先生から脊髄腫瘍についての講演がありました。最後に肩関節鏡(スーチャーアンカーを用いた腱板修復)のハンズオンセミナーを行いました。近年は新入医局員の数が増えてきており、若い先生方も多くなったため盛況に終わりました。参加された先生方には今回のセミナーをきっかけにさらなるモチベーションの向上に繋がれば幸いです。
コロナ禍の中、遠方よりお越しいただき、ご講演いただいた演者の先生方、ならびにご参加いただいた先生方、またハンズオンセミナーでご協力頂いたDePuy Synthes Mitekの方々に深謝致します。
第528回岩手整形災害外科懇談会
令和3年7月31日、盛岡グランドホテルにて第528回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。COVID-19による再三の緊急事態宣言が首都圏や大阪で直前に控える中、講師の先生方には遠路盛岡に来ていただいての懇談会となりました。
特別公演Ⅰは山口大学整形外科教授、坂井孝司先生より「股関節のキネマティクスからみた変形性関節症の治療」のご講演をいただきました。 坂井先生は変形性股関節症の主に人工関節置換術を要する患者において、脊椎及び骨盤のアライメントの影響についてキネマティクスにおけるエビデンスをお示し頂き、治療の注意点をご教授下さいました。
特別公演Ⅱは大阪大学名誉教授、現市立豊中病院総長の吉川秀樹先生より「骨軟部腫瘍の診断:誤診例からの教訓」のご講演をいただきました。吉川先生は特に専門分野で見慣れている症例において誤診が生じやすく、単純X線から得られる情報でも一点に集中せずに周囲から注意深く、臨床経過と照らし合わせて観察することが大事であるということを多数の臨床経験からご教授下さいました。
東京オリンピック2020がコロナウイルス収束の目処が立たず、無観客で行われている真っ最中の談論会でしたが、ご講演下さいました先生方、また感染拡大防止に留意頂きながらご参加下さいました皆様、そして共催の第一三共株式会社様に感謝申し上げます。
第17回岩手骨折治療研究会・第527回岩手整形災害外科懇談会
2021年6月5日ホテルロイヤル盛岡において、開催されました。コロナ禍の中、感染対策を行い、各テーブルに1人と十分な間隔を空け、ホテルの協力で40人分の席を用意しました。参加人数は33名で例年の半数でした。一般演題は3題あり、救急の森野豪太先生から、松下先生のtipping法の追試の好成績の報告。2つ目は磐井病院の佐藤貴也先生から珍しい両側のGaleazzi骨折に対し緊急手術、再転位と苦労した症例報告がありました。
最後に胆沢病院の及川龍之介先生から、高齢化に伴い増加している鴨嘴骨折に対してAIwiring systemを用いた手術の工夫の報告でした。
研修医教育講演は、栃内病院の沼田徳生先生が骨粗鬆性椎体圧迫骨折の治療の困難さ、予後不良な骨折を判断基準・予後不良が見込まれるもの、あるいは予後不良例に対する椎体形成術の手術時期について述べられました。
一般演題から研修医教育講演まで座長の磐井病院中村聡先生に活発な意見交換を引き出していただきました。
特別講演に静岡赤十字病院整形外科部長JABO/OTCJAPAN会長の野々宮廣章先生から『野々宮流髄内釘理論 骨幹端・骨端部骨折に対する髄内釘固定術の挑戦』という熱くお話していただきました。受傷機転・骨膜の壊れ方を考慮した理論的整復・直達牽引の利用・K-wireの工夫に満ちた使い方等々。素晴らしい術後写真を拝見し、髄内釘での固定術を見直し、適応を広げてもと思いました。
コロナのため2年越しのOfferにもかかわらず快く講演を引き受けていただいた野々宮先生、誠にありがとうございました。
参加していただいた先生方、共催の帝人ヘルスケアの方々に深謝します。
第526回岩手整形災害外科懇談会
2021年4月17日にホテルメトロポリタン盛岡NEW WINGで第526回岩手整形災害外科懇談会が開催され、京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座整形外科学教授の松田秀一先生と大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学教授の中村博亮先生に御講演いただきました。お二人の先生方には盛岡までお越しいただき御講演いただく予定でしたが、大阪・京都が『まん延防止等重点措置』の適用地域となったことで、急遽WEBでの講演に変更となりました。当日はLive配信での講演でしたが、多くの先生方に参加していただきました。
特別講演Ⅰでは松田秀一先生に「変形性膝関節症に対する適切な治療方法選択」の御講演をしていただきました。整形外科疾患のcommon diseaseの1つである変形性膝関節症ですが、どのような患者を重点的に治療すべきか、またどのように治療を進めていくかについて過去の報告やガイドラインでの推奨度、エビデンスレベルなども示していただきながら分かりやすくお話しいただきました。変形性膝関節症の治療を行うことは単に膝関節の疼痛が緩和するだけでなく、活動性が高くなることで全身的にも良好な結果をもたらすことにつながることが分かってきているようです。特に本講演でVarus Thrustを認める症例や、MPTA(medial proximal tibial angle)が低い症例では変形性膝関節症が進行する可能性が高く、手術加療も含め積極的に治療に関与していく必要があることを教えていただき、大変勉強になりました。
特別講演Ⅱでは中村博亮先生に「骨粗鬆症性椎体骨折の診断と治療」の御講演をしていただきました。講演では新鮮例と陳旧例の見分け方、また骨粗鬆症性椎体骨折と間違われやすい疾患(仙骨脆弱性骨折、多発性骨髄腫、傍脊椎膿瘍、化膿性脊椎炎など)を実際の症例で提示していただき、非常に分かりやすく実臨床で役立つ内容をお話しいただきました。長寿国、高齢化社会の日本ではますます骨粗鬆症性椎体骨折が増えることが予想されますが、本骨折によりQALY(Quality-adjusted life year:質調整生存年)が0.1下がり、QOLや生命予後にも影響することから、我々整形外科医が積極的に治療介入をする必要がある疾患であることを教えていただきました。
両講演とも非常に勉強になり、今後の診療で役立つ内容ばかりでした。新型コロナウイルスへの対応も含め、大変お忙しいなか御講演いただきました松田秀一先生、中村博亮先生には心より感謝申し上げます。
第42回岩手脊椎脊髄外科懇話会・第525回岩手整形災害外科懇談会
第42回岩手脊椎脊髄外科懇話会は、第525回岩手整形災害外科懇談会との共催で令和3年3月27日(土)、ホテルメトロポリタン盛岡にて当大学の遠藤寛興を当番世話人として開催されました。
特別講演1として、名古屋市立大学 大学院 医学研究科 整形外科学分野 村上英樹教授より「脊椎転移に対する根治的手術の進歩〜NSAIDsの位置づけも含めて〜」の御講演を頂きました。脊椎全摘術(TES)を含む脊椎腫瘍の最前線のお話を頂き、その熱意に圧倒されました。
また特別講演2として、兵庫医科大学 整形外科学講座 橘俊哉主任教授より「脊椎重篤疾患の診断と治療 – Red flagsの再考 -」の御講演を頂きました。従来Red flagsとして緊急対応を要した重篤な脊椎疾患について新たな治験を含め、幅広く豊富な経験に基づいた明快なお話を頂きました。
明日からの臨床に役立つ内容も数多く、参加した先生方は大変勉強になったものと思います。新型コロナウイルスの影響により残念ながら懇親会は行われませんでしたが、大変有意義な懇話会でした。
第524回岩手整形災害外科懇談会
2021年2月20日にホテルメトロポリタンNew wingで第524回岩手整形災害外科懇談会が開催され、慶應義塾大学講師、岡田英次朗先生と九州大学教授、中島康晴先生にご講演頂きました。中島先生は来盛の予定でしたが、2月13日の地震による新幹線運転見合わせの影響で、急遽Webでの講演となりました。以前であれば講演中止になったであろう事態ですが、柔軟にWeb講演に変更できたのは、コロナ禍において社会が変革した中での好例と思われました。
岡田英次朗先生は「腰椎椎間板ヘルニアに対するヘルニコアを用いた化学的髄核融解術」と題して、ヘルニコアの効果や適応について分かりやすくお話し頂きました。脊椎を専門としていない私にも適応となる年齢やヘルニアの分類がよく分かりました。また、椎間板中央に正確に注射することが有効である等のTipsを教えて頂きました。保険適応からまだ2年程度の治療ですが、今後の発展が期待されます。
中島康晴先生は「人工股関節置換術の進歩とunmet needs」と題して、Lancet誌にて20世紀で最も成功した手術と紹介された人工股関節置換術の歴史についてお話し頂きました。転子下偽関節形成術から現在の人工関節置換術に至るまでの過程を改めて振り返ることは若手にとっても非常に勉強になったと思われました。また、crosslinked PEが用いられる現在、スポーツ参加は摩耗に影響しないというデータを示して頂きました。Unmet needsとしては感染やインプラント周囲骨折、脱臼、アプローチ、設置位置を挙げ、対応を説明して頂きました。
両講演とも明日からの診療や患者説明に活かせる内容であり、大変為になりました。岡田先生、中島先生に心より感謝申し上げます。
第523回岩手整形外科災害外科懇談会
2021年1月16日に盛岡グランドホテルで開催された第523回岩手整形外科災害外科懇談会に参加いたしました。本会は首都圏を中心とした緊急事態宣言が発令された中での開催となり、講師の先生方が来県できないことからWeb開催となりましたが、多数の先生方の出席を頂きました。
今回は、東邦大学医学部整形外科教授の高橋寛先生と京都府立医科大学運動器機能再生外科学教授の高橋謙治先生に特別講演をして頂きました。
高橋寛先生は「脊椎骨粗鬆症に対する薬物療法と手術療法」と題して、骨粗鬆症薬の適応や成人脊柱変形の手術加療に対する術前からの薬物療法の必要性、また今後の骨粗鬆症治療の課題についてお話し頂きました。近年、骨粗鬆症治療薬の改善が目覚ましいものの、その適応選択の重要性やコロナによる受診控えによって起こりうるデメリットなど、タイムリーな話題をいただきました。
高橋謙治先生は「MRIを用いた変形性膝関節症の病変解析と治療評価」と題して、変形性膝関節症の評価、病態研究、進行予測、治療評価についてお話し頂きました。早期軟骨変性を評価しうるT2マッピング法やT1ρマッピング法、エコーを用いた半月板逸脱評価、また進行予防のためのエクササイズなど、最新の知見を交えながらお示し頂きました。
Web開催ではありましたが多数の質問が寄せられ、活発な談論会となりました。各先生方へ心より深謝申し上げます。
第522回岩手整形外科災害外科懇談会
2020/11/14 (土) に盛岡グランドホテルで開催された第522回岩手整形外科災害外科懇談会に参加致しました。今回は、杏林大学教授の細金直文先生と慶應義塾大学教授の中村雅也先生に特別講演をしていただきました。
細金先生には、成人脊柱変形の治療戦略についてご講演をいただきました。成人脊柱変形治療は現在脊椎脊髄領域におけるホットトピックの1つであり、我々岩手医科大学整形外科としても積極的に治療に取り組んでいる分野です。脊柱変形の基本的な内容から具体的な手術方法まで詳細な報告をいただきました。現在、当科では成人脊柱変形の手術に対して、側方進入腰椎椎体間固定術(lateral inter body fusion : LIF)を併用した矯正固定術を行っていますが、細金先生の様々な知見に裏付けされたご講演を伺い、矢状面アライメントの矯正や低侵襲性等、LIFの有効性を再確認しました。
中村先生には、超高齢社会における運動器疾患の治療戦略ー疼痛と麻痺の克服による健康寿命延伸ーという内容でご講演いただきました。基礎と臨床との相互のリサーチクエスチョンを明確にしていく姿に感銘を受けました。頚椎の靭帯骨化に関しては、MRIにおける脊柱管占拠率と分類によって手術適応を普段から検討しているものの、明確な基準はありませんでしたが、中村先生の詳細な検討によりおおよそのcut off値をお示しいただきました。さらにMRIでtract fiberの確認が手術適応の非常に有効な判断材料になるようで、今後の診療でも取り入れたい新たな知見でした。また、再生医療に関する内容もご講演いただきました。現在COVID-19流行の影響で治験が滞っているようですが、近日中に脊髄損傷後の患者に対する治験が開始されるとのことです。今後の整形外科治療のブレイクスルーになる可能性を秘めており、非常に結果を期待しています。
今回の講演で得られた知識を今後の診療や研究で活かしたい思います。
第521回岩手整形外科災害外科懇談会
2020/10/03(土)に盛岡グランドホテルにて、順天堂大学・石島旨章教授、熊本大学・宮本健史教授をお招きして、第521回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。特別講演Iでは順天堂大学・石島旨章教授より「ロコモ原因疾患としての骨粗鬆症と変形性膝関節症-共通点と相違点から原因と治療を考える-」という表題でご講演いただきました。平均寿命が男女とも80歳を超えた我が国において、運動器疾患が要支援・要介護の原因の約1/4を占めるといわれ、運動器疾患への予防の重要性は近年さらに認識されています。骨粗鬆症と変形性膝関節症との関係、変形性膝関節症の発生機序や治療法の検討に関して最新の知見を交えてお話しいただきました。
特別講演IIでは熊本大学・宮本健史教授より「高齢者における運動器疾患治療」という表題でご講演いただきました。腰部脊柱管狭窄症の原因となる黄色靭帯の肥厚と糖尿病の関連性、骨粗鬆症の原因となるエストロゲンをはじめとしたホルモン変化と破骨細胞活性のメカニズムや、それに関連した産婦人科との共同研究など多岐にわたる先生の研究結果に関して最新の知見を交えてお話しいただきました。講演後は、多くの質問が寄せられ、活発な談論会となりました。石島旨章教授、宮本健史教授に心より感謝申し上げます。
第520回岩手整形災害外科懇談会
令和2年9月5日、ホテルメトロポリタン NEW WINGにて第520回岩手整形災害外科懇談会が開催されました。COVID-19の影響で令和2年2月以来の懇談会となりましたが、遠方より講師の先生方に来盛いただき、参加人数の制限やマスクの着用、来場者の検温実施や情報交換会の中止など感染拡大防止策に十分注意しての開催となりました。
特別公演Ⅰは静岡県から三宅整形外科医院、三宅信昌先生より「費用対効果からみた医療行為の価値~Value Based Medicine~」のご講演をいただきました。三宅先生は日本臨床整形外科学会や日本リウマチ学会で長年社会保険委員を勤められたご経験から、診療報酬点数や医療経済についてお話し頂き、医療費の有効利用をすべきであり、労働損失の削減につなげる事が大事であると総括されました。
特別公演Ⅱは東京大学整形外科学講座主任教授、田中栄先生より「関節リウマチにおける骨脆弱性と骨破壊対策」のご講演をいただきました。田中先生は多数のデータをお示し頂き、RA治療は生物学的製剤やJAK阻害剤の登場で劇的に改善し、ステロイド使用率も減少している一方で、高齢化の進む我が国で高齢発症RAや若年発症して高齢に至ったRA患者がRA患者全体の3割近く占め、大関節の手術は減少しているものの、足趾の手術とともに骨粗鬆症による骨折は減少していない事、RA骨粗鬆症の対策・治療についてご講演頂きました。
コロナウイルスによる未曾有の災禍の中、遠方よりお越し頂き、ご講演下さいました先生方、また感染拡大防止に留意頂きながらご参加下さいました皆様に感謝申し上げます。